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進化した賃貸

二〇〇二年の八月、広島の平和記念公園に原爆平和祈念館がオープンした。 設計は、同公園内の近代建築の傑作・広島平和記念資料館を手がけたT下健三が関わっている。
二つの施設にはちょうど五〇年の隔たりがある。 平和記念資料館は、原爆ドームに到達する強力な中心軸を設定し、焼け野原となった爆心地に明快な秩序を与えた。
平和祈念館は、むしろこの幾何学や公園の緑を邪魔しないよう、ほとんどの施設を地中に埋める。 地上には悲劇の瞬間、八時一五分を示す小さなモニュメントが見えるだけ。
内部に入り、反時計回りに円を描くスロープを降りる構成は、時をさかのぼる行為を連想させる。 一番下が吹抜けになった追悼室だ。
高さ八メートル、直径一八メートルの円形の空間である。 周囲の壁には、かつての町名を記した陶板と焦土の風景のレリーフがパノラマ状に展開し、人々を包む。
広島の写真は、原爆死没者の数にちなみ一四万のドットで処理されたという。 一九九〇年代以降、建築を隠す手法は注目されているが、はっきりとした造形で知られる巨匠のT下も採用したのは興味深い。

その静けさは慰霊の空間にも適している。 ただ、死者のデータにアクセスできるデジタル・アーカイブの空間は、今後もっと重要になる装置だが、出口付近の余りの部屋にしかなっていないのは残念だ。
また現場で発掘された瓦篠を地上に並べたのも気になる。 本物だったとしても、テーマパーク的な演出を思わせるからだ。
死者を弔う空間に良い悪い言うべきではないかもしれないが、やはり洗練されたデザイン九州に出かけたついでに、かねてから訪れたいと思っていた建築を見学した。 大分の中津市の郊外に建つ風の丘葬祭場である。
設計は、M文彦。 三〇年をかけて雰囲気のある街並みを形成した東京が望まれる。
骨室や炉室は、コールテン鋼の斜めの壁によって隠され、建築の姿を見えにくくしている。 訪問した時間帯がよかったせいもあるが、光と影の効果は詩的な美しさを生む。
特に斎場は、足元に水平の開口部をあけ、周囲を包む水面に反射した太陽光を内部に導く。 その結果、うす暗い室内に奇跡的な光がゆらめいていた。
風が吹いて、水がそよぐと、光の筋もかすかに動く。 人工の照明では絶対に実現できない。
また屋外には、風のオブジェとベンチを設置代官山ヒルサイドテラスのプロジェクトを代表作にもつ、良質なモダニズムの建築家として知られる。

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